GJ部SS 「ひざ枕」

※2013年にアメブロにUPしたGJ部の未完成SSを6年越しで加筆修正を加え完結させました※

 


「センパイ、責任取りやがれですよ」

いつもの放課後、いつもの部室。

タツの中からひょっこり顔を出したタマは突然京夜に向かってビシッと指を指しながら、いきなり訳のわからない事を叫んだ。

「何が?」

「だから責任ですよ責任。センパイのせいでタマは大変な思いをしてるです。どうしてくれるですか」

「何もした記憶はないし別に責任取るつもりもサラサラないんだけどゴメンねと一応形だけでも謝罪する素振りを見せておきます、とキョロは興味がなさそうにタマに告げます」

「何ですか文法おかしいですよちゃんと日本語話しやがれですよどこのシスターズですか何号ですか人の話聞かないのいくないですよー!!」

うわぁ、タマに文法諭されちゃった。
自分の文法は棚に上げ主張するタマがあまりにカワイイので京夜は読んでいたとあるラノベを閉じた。

「え~と。…で。僕本当にタマに何かした記憶ないんだけど…」

「なんだー?キョロー。お前…タマに言えない事をしたのー?しちゃったの~~~?」

「いやだから部長、話ややこしくしないでくださいよ~」

きししと笑みを浮かべる部長をたしなめ、タマに話の先を促す。

何しろこの二人とまともに話していたのでは会話があさってどころか数年先に飛んでしまうのだ。

とにかく用件のみを聞く。
それでやっと来週の話ぐらいまで帰ってこれる。

「タマ、最近眠れないのです。センパイのアレが忘れられなくて、布団入っても気になって目が冴えてしまうのです。どう考えてもセンパイの責任なのですよ」

「--ちょ--。おま。まさか。ほ…本当に……タ…タマに手を出したのか!」

「は、はい!?そんな訳ないじゃないですか!」

首がちぎれんばかりに左右に頭(かぶり)を振り否定していると

「我々には詳しく聞く権利があると思うのだが。」

何やら切迫した表情を浮かべながら、おそらくチェスの世界統一チャンピオンさんと対戦中であろうマウスを放り出し紫音さんまでもが絡んでくる。

「さぁ吐け今吐けすぐに吐け!ありのままを素直に白状しろ!じゃないと……噛むぞ!」

「…ちょ、待ってくださイタタタタ、部長、もう噛んでるじゃな………イタタせめて甘噛みでお願い~!!」

「キョロ君、君は今やGJ部及び全日本タマ学会から同時に嫌疑を掛けられている。つまり容疑者であると言える。意義申し立てがあるならば速やかに口答にて申告したまえ。残念だが黙秘権は認められない。それから発言は慎重にした方が身の為だ。でなければ別件容疑も追及する可能性があるのでね」

ジト目をキョロに向け、淡々と紫音さんが告げてくる。
何故だろう、物凄い恐怖を感じる。

「ほら、キョロ。肉とお茶ぐらいなら出すからさ。早く。洗いざらいぶちまけろ。おいキララ、容疑者Kに肉だ肉。そんなでかくなくていい、なんなら骨で充分だ。--あぁメグ、紅茶じゃなく日本茶を出せ。それもとことん渋めでな。」

ニヤリと極悪な笑みを浮かべ部長が追い撃ちをかけてくる。
マズイ。何かが非常にマズイ。完全に容疑者扱いだ。

「キョロ、犯人?肉、お供え?」

「あ、は~い。それでは恵特製スペシャル濃縮還元シルベスタギムネマ茶をお出ししますねー。」

GJ部の守り神&天使の両名の態度が普段と変わらずユルふわなのが唯一の救いだが、逆に言えば味方になってくれる予感も全くしない。

そう、今の状況はまさに四--「四面楚歌、だね」
紫音さんがボソリと呟く。
まるで京夜の思考を読み取ったかの様な絶妙なるタイミングで。
--本気だ。天才が本気を出している。ニュータイプ能力を発揮している。

「--ちょっ!--タマ!ちゃんと!ちゃんと説明してよ!お願いだから!僕、タマに手なんか出してないよね!?」

「は?何言ってるですか。全然意味わかんないです。なんでタマがセンパイに手出されなきゃならないですか。手じゃなくて足ですよ。ひざ枕です。勘違いしやがるなです」

「…え?ひざ…枕?」

「そうです。こないだセンパイにひざ枕して貰ったじゃないですか」

ああうん。確かに。

「あのひざ枕で寝てから、夜、落ち着かないのです。枕が首に合わない感じがしてどうにも眠れないのです。おかげで授業中眠ってしまって先生に毎日起こされてるですよ-。アンコにもからかわれるのです。これはもうセンパイの責任と言って間違いないのですよ。さあ今すぐ責任取るです!」

「いや…責任って言われても--ねぇ?部長-」

誤解は解けたはずなのだが部長は尚も辛辣な視線を京夜にぶつけてくる。

「しらね。自分で何とかするんだな。うちらにはカンケーないし。だいたいお前の膝は私専用だったはずだろ。それを安易に貸し出すお前が悪い」

ぷいと視線を外されて、なぜかいたたまれない気持ちになる。


「そうだね、今回の案件は全てキョロ君の自己責任意識の希薄さが招いた結果と考えて良いだろうね。いわゆる自業自得。藪を突いて蛇を出す。キジも鳴かずば撃たれまい。」

マウスを持ち直しクルリとパソコンに向かう紫音さん。

世界統一チャンピオンさん、ごめんなさい。今の彼女はニュータイプ能力覚醒中なので多分過去最強です。

「ふわぁ~あ……もう用件は済んだですか。いい加減眠くなってきたです……」

瞼を擦りながらタマが近づいて来る。

「センパァイ……ひざ枕………お願…い…です…」

舌ったらずなタマにしな垂れられちゃった。うん。はい。します。今すぐします。

ひざ枕でも肉布団でも何でもします。

僕の膝の上でむにゃむにゃ口元が緩むタマを見てると、何故かポカポカ暖かくなって来るのだけれど、それを打ち消すほどの冷たい視線が身体中にグサグサ突き刺さって、今にもタルから飛び出しそう。

「キョロ君危機一髪、だね。…すぐに飛び出させて終わりじゃつまらないからね…刺せるだけ刺して

苦しめないと…」

怖っ!!紫音さん怖っ!思考読んでサイコ発言怖っ!!黒ヒ⚫️危機一髪はそういう遊びじゃ

ないですよ!!そもそも生身の人間でやっちゃいけないよ!!

「トイレ行きたくなって立ち上がろうとした時に足シビれろ。そのままもらせ。」

部長が強烈な言霊を放ってきた。現代に蘇った呪いによって僕はこの学校から抹殺されるかもしれません。

 

拝啓、父さん、母さん、霞。先立つ不孝をお許しください。

 

今日もGJ部は平和だ(希望的観測)